2月1日(火)第11回三國湊夜咄会 「いまに生きる 三国箪笥・船箪笥」を開催しました!!
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【2/1 第11回三國湊夜咄会「いまに生きる 三国箪笥・船箪笥」を開催しました!!】
2020年3月に予定していた夜咄会が中止となって以来、約2年ぶりの再開となった今回は、2019年11月の「笏谷石のおはなし」に続く「湊の交流文化シリーズ」の第二弾として、三国箪笥・船箪笥をテーマに開催しました。これまでは全てオフラインで開催してきた三國湊夜咄会ですが、昨今のウィルス感染拡大の状況に鑑み、今回はオンラインを基本として開催しました。
今回の夜咄会の共催者である「有限会社 匠工芸」さん(福井市)に、展示をかねて夜咄会でお話をお聞きする企画は、2019年から検討をしていました。昨年の6月、その匠工芸の勝木憲二郎会長さんが、三国で箪笥の展示をされたいとUDCSに立ち寄ってくださったことから今回の企画が本格的に始動しました。40年以上前、三国の船箪笥に出会った勝木さんは、その精巧な機能美に魅了され、一から製造技法を研究し製作に取り組み始められました。三国はもちろん、三国と並ぶ代表的産地とされる佐渡や酒田の家々もくまなく訪ね歩き、箪笥を見て回った経験が匠工芸さんの職人技術の礎となっています。首都圏や関西エリアをはじめとして百貨店などで展示会をされることが多い匠工芸さんですが、三国での展示は初めてということで、今回はあえて「三国まちづくりイベント」と題して2月1日から旧森田銀行本店での展示が始まりました。
夜咄会では、匠工芸代表の村田浩史さんから、三国箪笥と船箪笥の種類や材料と道具へのこだわり、最も高度な技術を要する金具製作、箪笥製作への思いなどについて映像を交えてお話しいただき、実際にUDCSに用意していただいた船箪笥を使ってその精巧さやからくりなどを説明していただきました。船で使われた箪笥が、枠箪笥や車箪笥というインテリアの一つとして用いられるのは、昔も今も同じであり、新しいものも、船で使われていたという歴史を語ることができるのが、船箪笥の魅力だというメッセージがありました。
三国港突堤ファンクラブ会長で、旧森田銀行本店の保存活動や三国箪笥(船箪笥)を含む坂井市の19の構成文化財の日本遺産追加認定の際にも尽力された木村昌弘さんからは、指物や彫刻、漆などさまざまな優れた工芸技術を有していた三国において、陸の総合工芸品は三国仏壇、そして船で活躍したのが船箪笥であるとの説明がありました。小木(佐渡)や酒田と違い、上方の影響を受けている三国の箪笥は作り方が非常に丁寧で繊細であり、豪壮な農家建築と、柱の細い数奇屋風の商家建築との違いと同じように、線の細さがあるが、それが三国らしい雅であり、外国においても”TANSU”としてその高い芸術性が注目されているという村田さんからの話に、現代に生きる私たちが、かつての船頭たちが残した歴史文化に新しいストーリーを重ねて、これから三国が誇りとするべきことが見えてくるのでは、という示唆に富んだコメントをいただきました。直接会場にお越しくださった参加者からも、船に使うことはなくなった今、船箪笥をつくることの意味は何かといった質問や、家にある箪笥をあらためて大切にしたい、三国という名前を大切にしてものづくりをされている匠工芸さんの活動に感謝したい、といった質問や意見が出されました。
当初は片手で持つことのできる手提げ金庫のようなものであったのが、大きさも装飾もどんどん進化して大流行した船箪笥は、平時には商人らのステイタスシンボルとなり、海難事故等の有事には、思い金具の装飾の施された面が底になることで水に浮き、往来手形などの重要なものをまもるための機能を有した、まさに「用の美」が凝縮された工芸品です。三国箪笥や船箪笥は、決して過去の芸術作品としてだけではなく、古いものも新しいものも、今に生きる私たちが歴史文化に思いを寄せると同時に、未来に向けたストーリーを描く拠りどころのひとつでもあります。今回の展示や夜咄会が、そのきっかけとなれば幸いです。
旧森田銀行本店での匠工芸さんの箪笥展示は、2月13日(日)までの開催です(2月7日は閉館)。詳しい解説もいただきながら、間近でたくさんの箪笥の魅力に触れていただける機会ですので、ぜひお出かけください。