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ワークショップ「鬼辺輪中を歩く」が開催されました(11/29)

2020.11.30
  • 坂井市文化財保存活用地域計画
  • イベント


11月29日、坂井市文化財保存活用地域計画(地域計画)作成事業の一環として企画したワークショップ「鬼辺輪中を歩く」が木部新保・折戸・池見の3地区を対象に開催されました。テーマは「水が育んだ恵みとゆたかな田園風景」。九頭竜川・兵庫川にはさまれた木部地域一帯は低湿な氾濫地域で、1796年に鬼辺輪中が完成しました。水との共生による人びとの営みが連綿と積み重ねられ、嶺北地方を代表するゆたかな穀倉地帯が形成されてきたといえます。

とりわけ、現在の清永、島、木部新保、折戸あたりは、かつて大沢という大きな沼地になっており、水鬼が棲んでいるといわれていました。大同元年、鬼を退治するために比叡山から7人の高僧が差し向けられたといい、木部新保の紀倍神社はその祈祷所で、七堂伽藍が建てられたと伝わっています。なお、木部地区には7戸の子孫が今も残っています。

ワークショップには定員を大きく上回る30人以上の方が参加し、鬼辺の起源といえる紀倍神社からスタート。紀倍神社には八角形の屋根をもつ神輿が納められており、鬼を退治したとされる9月19日に営まれてきた祭礼では、木部地域の各集落を神輿が渡御していました。明治18年の大洪水を機に明治33年から内務省直轄事業として実施された九頭竜川の改修により、当該地域の集落では家屋等が現在地に移転しましたが、紀倍神社も現在の堤外地にあたる場所から移転しています。堤防脇にある田上神社の祭神は田の神で、鳥居は旧坂井町内で最も古い室町時代後期のものです。

九頭竜川の堤防は、近年国土交通省により拡幅・舗装整備がなされ、サイクリングコースとしても親しまれています。折戸集落は九頭竜川改修工事で全世帯が現在の位置に移転しましたが、堤防の上からはかつての集落の場所や対岸の下野と船が行き交った渡場の跡などを確認しました。折戸の白山神社の祭神は鬼。退治しただけではなく、神様として祀るというところもユニークです。他にも、「追込」や「鬼ノ辺」、「喉首」といった地名が水鬼伝説に関係していると考えられています。

池見地区にある稲荷神社の境内には、天満神社と神明神社も祀られていますが、天神公は折戸村と池見村の境に堤防を築き、下流の池見村を水害から守り不作を救った新家金平という人物の遺徳を顕彰するために建立されたと言われています。また、稲荷神社で奉納されてきた池見神楽は、文政10年に池見の人びとが豊作と村の平安を祈願するため伊勢参りに出かけたことに由来し、これまで中断と復活を繰り返してきましたが、現在は平成24年に奉納されたのを最後に中断しています。文書など歴史資料が残されていることもあり、今後の調査による価値の顕在化が期待されます。

最後は、木部新保の生活改善センターで振り返りを行い、坂井木部地区まちづくり協議会・教育ぶんか部会の栗原会長から、この「第一歩」を次につなげていきたいという抱負が述べられました。鬼辺輪中を形成していた集落は19あります。これからも3地区の皆さんが一緒に「歩み」を重ねて、かつてのつながりを再確認するとともに、次世代に連携の輪がつながることを期待しています。